美術館や博物館で新たな特別展が始まる際、多くの場合レセプションや内覧会といったものが催されることが多いと思う。開会式と称して関係者のスピーチがあったり、立食パーティーが催される場合もある。
突然招待されたらどうしようか?なんて思うことは無いだろうか。とある内覧会を事例にお伝えしたいと思う。
国立西洋美術館 ル・コルビュジエ特別展のオープニングレセプション
今回私がお邪魔するのは東京・国立西洋美術館にて開催される「ル・コルビュジエ 絵画から建築へーーピュリスムの時代」の内覧会である。
世界遺産である国立西洋美術館の中でその建物を作ったコルビュジエの展示を見るという、世界遺産好きには堪らない企画展だ。もう明らかに世界遺産好きを狙いに来ている。
今回、この内覧会にお邪魔する機会を得た。世界遺産プラスの責任編集長という立場上行かないわけにはいかない。颯爽とGoogleカレンダーに「コルビュジエ・内覧会」と書き込んだ。
レセプションにはどんな服装で行くべきか
オープニングレセプションに招待された場合、まず考えなくてはいけないのは「どんな服を着ていくか」である。
結論から言うとスマートカジュアルで問題ないのだが、それでも悩んでしまうだろう。気持ちはわかる。
ハーフパンツにサンダルなんかで行こうものなら主催者の顔を潰すことになってしまうし非常識な人間の誹りは免れない。逆に燕尾服やモーニングで行こうものなら「内閣発足しましたか?」や「ご子息の御結婚ですか?」と言われかねない。や言われないけど浮く。たかがいち招待客ごときが大それた格好をするべきのではないのだ。慇懃無礼というやつだ。
とはいえこれはそれなりに名の通った美術館で催されるフォーマルな展示会の話である。もっと小規模なギャラリーなどでは思い切り砕けた格好でもいいかもしれない。要はまともな感覚を持っていれば大丈夫という身も蓋もない回答だ。あしからず。
入場
休館日、ということで門は封鎖されており、警備員の方の仕事熱心な視線を浴びながら入り口へと向かう。翌日から正規に企画展がオープンするため既に準備は整っているという風情だ。
開会式。レセプション。Opening Ceremony Receptionである。報道、関係者と様々な名目で招待されているだろうが先ずは受付だ。いかに自分が怪しいものでないかを一般的所作で証明しつつ名を告げ入場の許可を得る。
開会式
今回の内覧会では、わりときっちりした開会式が行われた。
伝えられていたほぼオンタイム、普段は企画展の催される地下二階のスペースに招待者が集まり、壇上には主催者や来賓が厳粛に並んでいた。
フランス・スイス人と思しき方々も各所にいらっしゃる。展示内容を考えれば当然か。コルビュジエはスイス人でもありフランス人でもあった。
来日されたコルビュジエ財団の事務局長や、駐日スイス特命全権大使のフランス語でのスピーチが行われ恙無く開会式は終了した。ーー既にここに挙げた方々の肩書きから明らかにフォーマルな場であることは言うまでもないだろう。
ル・コルビュジエ 絵画から建築へーーピュリスムの時代
展示内容は「ピュリスム」を多めにフィーチャーしながら、ル・コルビュジエという人物がいかにして芸術世界から建築世界へと足場を固めていったか、その背景にあった芸術運動などを多くの作品を交えて紹介している。
画家、ジャンヌレ
シャルル=エドゥアール・ジャンヌレという画家をご存知だろうか。
画家アメデ・オザンファンと共に「ピュリスム(幾何学や比例による純粋で明快な構図)」運動の旗手となったジャンヌレは、ほかならぬル・コルビュジエ自身であった。そう、コルビュジエは建築家となる前は画家だったのである。
端的に言うとつまり、本展覧会では画家ジャンヌレがいかにしてル・コルビュジエとなっていったかが提示されている。
※しかし「ジャンヌレ=画家」、「コルビュジエ=建築家」といった単純な話ではどうやらなさそうだ。なぜならコルビュジエになってからも彼は絵を描き続けたからだ。彼にとって絵を描くと言う作業も、建築設計も、家具設計も、ましてや文章を詩的に綴ることさえもシームレスでグラデーションのようになった「表現」であったのだろう。
この展示会の意義
既に述べた通り、本展はコルビュジエ自身が設計した(そして彼の弟子である三人の日本人建築家が完成させた)この国立西洋美術館で彼の総合芸術家としての萌芽と一流建築家になっていく過程を主に初期の作品に焦点を当てながら辿るものである。
普通国立西洋美術館で特別展が行われるときは大抵地下で催されるのだが、今回は普段常設展示のある本館にて催される。彼の作った、彼の思想を体現した建物で、彼の作品に触れるのである。なんと贅沢な。



是非その場に足を運ぶことをお勧めしたい。
展示の後には軽食を
内覧会、レセプションでは立食パーティーよろしくフィンガーフードなどをつまみながら御歓談という場が設けられることがある。
本展でも飲み物や食べ物が用意されていた。
私はフランボワーズのケーキを頂きながら、同じテーブルで談笑しているフランス人と思しき一団の会話に入っていこうかと試みたが、あまりにもレベルの高すぎるミッション過ぎて諦めた。私は二つ目のケーキを取りにそそくさとケータリングの長机へと逃げるように向かった。
フランスでは会話が面白い人物の方が、ただ容姿端麗なだけの男女よりもよっぽどモテると聞いたことがある。それを知って以来私は会話の節々にエスプリを効かせることを心掛けているのだがなかなかどうして難しい。
余談だが、私は学生時代第二外国語がフランス語だった。Rの発音が得意で、日常の挨拶をボンジュールにしていたほどだ(不評だったため1週間でやめた)。今、そんなことを思い出した。オチはない。ほら、エスプリを効かせるなんて本当に難しいんだよ。
レセプションのお土産・記念品
レセプションでは、帰りしなにお土産を渡されることもある。今回はとても素敵なものを頂けたので参考までに紹介したいと思う。
本展の図録だ。こちらは解説が詳細で見応えがあり、装丁もしっかりしている。
リンツのチョコレート。なんと、Le Courbusierと本展覧会名が刻まれている限定パッケージである。
おわりに
以上が美術館のオープニングレセプションの一事例である。
誰よりも早く展示を拝見でき、普段飲食が難しい場所で飲み食いさせてもらい、あまつさえお土産までもらえるのだ。
もし招待頂けたら、行かない選択肢があるだろうか。
開催情報
世界遺産 国立西洋美術館60周年記念
ル・コルビュジエ
絵画から建築へーーピュリスムの時代
開催日時:
2019/2/19 (tue) 〜 2019/5/19 (sun)
場所:
東京・上野公園
国立西洋美術館 本館
開館時間:
午前9:30〜午後5:30
毎週金曜・土曜は午後8時まで
(入管は閉館の30分前まで)
休館日:
毎週月曜日、5/7 (tue)
拝観料:(前売りor団体 / 当日券)
一般 1,400円 / 1,600円
大学生 1,000円 / 1,200円
高校生 600円 / 800円
主催:
国立西洋美術館
ル・コルビュジエ財団
東京新聞
NHK